ほとんどの人は、自分の飲酒量を少なく見積もっています。人が自分で言う飲酒量と実際の飲酒量の差は、アルコール研究の中で最も一貫した発見のひとつで、何十年にもわたり、さまざまな国で、さまざまな方法によって再現されてきました。この過小評価は、うそや隠しごとによるものではありません。自分は正確に答えていると本気で信じている人にも起こります。その理由は予測できるもので、人間の記憶、知覚、そして注ぐ量のすべてが、正確に思い出すことを妨げていることにあります。この記事は、飲酒の記録をまとめた完全ガイド、「飲酒の記録」セクションの一部です。
この記事では、その差の実際の大きさ、それが起こる理由、過小評価の具体的なパターン、そして対策を解説します。
# 差の大きさ
自己申告の飲酒量と実際の飲酒量の差は、さまざまな方法で測定されてきました。
販売量と自己申告の食い違い。 研究者が、ある国で販売されたアルコールの総量と、その国の人々が飲んだと申告したアルコールの総量を比べると、調査で把握できるのは、一貫して販売されたアルコールの一部だけで、多くの場合その半分から3分の2ほどです(イングランドではおよそ60%)。この差は、輸出、こぼれた分、売れ残りの在庫では説明できません。人々は全体として、大幅に少なく申告しているのです。
記録の研究と記憶の研究。 同じ人に、飲酒を思い出してもらうと同時にリアルタイムで記録してもらうと、リアルタイムの記録のほうが、一貫して思い出した量より多くなります。
生物学的マーカー。 アルコールの摂取量は、血液や毛髪に含まれるエタノール代謝物の検査で、ある程度測定できます。生物学的マーカーと自己申告を比べた研究では、一貫して自己申告が実際の摂取量を下回っています。
レシートとバーの勘定。 翌朝のカードの明細は、同じ食い違いのおなじみの例です。支払額も、その裏にある杯数も、たいてい自分で思っていたより多いのです。
この差は、研究、方法、対象集団を問わず一貫しています。大量に飲む人に特有のものでもありません。少量や中程度に飲む人も、割合としては同じくらい少なく見積もっています。
# 記憶が具体的にどう失敗するのか
いくつかの具体的な記憶のしくみが、過小評価を生んでいます。
# エピソード記憶は目新しさを選んで残す
脳は、すべてのドリンクを同じ重みで保存するわけではありません。その夜の最初の1杯は鮮明に記憶されます(飲んでいない状態から飲んでいる状態への、はっきりした切り替わりだからです)。家に帰る前の最後の1杯も、ある程度記憶されます(これも切り替わりだからです)。真ん中のドリンクは、区別する要素が何もないので、ひとまとまりにぼやけてしまいます。
これはエピソード記憶のふつうの働きです。いつもの出来事は圧縮され、目新しい出来事は広がります。しかしその結果、6杯飲んだセッションが、記憶の中では3〜4杯の別々のドリンクのように感じられ、思い出そうとしたときに本当に少なく申告してしまうのです。
# 飲まなかった最近の日に引っ張られる
「どれくらいの頻度で飲みますか」と尋ねると、古い日よりも最近の日が重く見られます。この3日間は飲んでいないけれど、その前の2週間は大量に飲んでいたという人は、長い期間のパターンではなく、最近の飲まなかった日をもとに答えることがよくあります。
この最近の出来事への偏りは、記録によって修正されます。データの中では、すべての日が同じ重みを持つからです。
# 自分のイメージを守る記憶
自分はほどほどに飲む人だと思っている人は、「ほどほど」を裏付けるような形で自分の飲酒を思い出しがちです。一貫した自己イメージを保とうとする脳の傾向は、意図的なゆがみではなく、記憶のしくみそのものです。自己イメージと矛盾する記憶は、それを裏付ける記憶よりも思い出しにくいのです。
この効果は、飲酒以外にも多くの分野で記録されています。支出、運動、食事の量、労働時間などはすべて、その人が持っているアイデンティティを守るような形で思い出されます。
# 「平均的な1週間」という錯覚
「ふつうの1週間にどれくらい飲みますか」と尋ねられると、人は平均を計算するのではなく、平均を想像します。想像された平均は、たいてい本当の平均よりも、実際の範囲の少ないほうの端に近いものです。
少ない週は4杯、多い週は20杯というように週によって差がある場合、想像する「ふつう」は、実際の平均である12杯前後よりも、8〜10杯に近いことがよくあります。
# きりのいい数字と過少申告
自己申告の飲酒量には、1、2、5、10の倍数へと丸める傾向が一貫して見られます。人は「7杯」ではなく「5杯くらい」と言います。大きな数字は「ほどほど」らしくないと感じるため、丸めは通常、上ではなく下に向かいます。
# 過小評価の具体的なパターン
全般的な記憶の失敗に加えて、いくつかの具体的なパターンが過小評価を生んでいます。
# ワインの注ぐ量は思っているより多い
ワイングラスの標準的な量は、英国では175 ml、米国では5 oz(約148 ml)です。家で注ぐ量は、英国では通常200〜250 ml、米国では6〜8 ozです。
「ワイン1杯」と数える人は、たいてい家で注いだ量のことを言っていながら、標準的な量で見積もっています。家での「2杯の夜」は、標準的なグラスで3杯分、ときには4杯分にあたることがよくあります。
# ビールの度数は上がっている
英国のビールの平均度数は、1990年代の約4%から、現在では約4.5〜5%に上がっています。クラフトビールがこの傾向を加速させ、多くのクラフトビールは標準的な4%ではなく5.5〜7%です。
度数を記録せずに「パイント」の数だけを記録している人は、決まって摂取量を少なく見積もります。度数5.5%のIPA 3パイントには、度数4%のラガー4パイントと同じだけのアルコールが含まれています。
# 家で注ぐスピリッツの量
英国のパブでの1杯の量は25 ml(店によっては35 ml、ダブルは50 ml)です。家でスピリッツを注ぐときに量を測ることはめったになく、「1杯」あたり通常50〜80 mlになります。家での「ウイスキー2杯」は、パブでの4杯分のアルコールであることがよくあります。
これが、家での飲酒を少なく見積もる最大の原因です。パブでの1杯の量は知っていて、家で注ぐ量も同じくらいだと思い込んでいますが、家で注ぐ量はその2〜3倍なのです。
# 「注ぎ足し」のパターン
家で友人と飲んでいると、グラスが空になる前に注ぎ足されます。実際には5回注がれていても、空にしたグラスは2杯だけなので「2杯」と数えてしまうのです。
バーでも同じようなことが起こります。サービスのスタイルによっては、特にボトルサービスのあるイベントで、バーテンダーがワイングラスが空になる前に注ぎ足します。
# ミックスドリンクとカクテル
カクテルに含まれるアルコールの量はさまざまです。標準的なマルガリータには2〜3ユニット、強めのものには4〜5ユニットが含まれています。人は通常、強さにかかわらず、カクテルを「1杯」と数えます。
ロングアイランド・アイスティーには5種類のスピリッツが入っていて、標準的なレシピで3ユニット、バーの注ぎ方では4ユニット以上になることもよくあります。これを「1杯」と数えると、アルコールの摂取量を大きく少なく見積もることになります。
# 忘れられたドリンク
移動や合間の時間(バーで待っている間、夕食に向かう途中、料理をしながら、テイクアウトの食事と一緒に)に飲んだドリンクは、思い出すときに忘れられがちです。「飲酒のセッション」だと感じなかったので、数に入らないのです。
こうした忘れられたドリンクが1週間で積み重なると、人によっては飲酒量全体の30〜50%になることもあります。
# 「友人より飲んでいない」効果
特に指摘しておきたい認知のパターンがあります。お酒を飲む人のほとんどは、自分は友人より飲んでいないと信じています。これは集団全体で見れば統計的にありえません。全員が友人より飲んでいないのなら、いちばん多く飲んでいる人は誰もいないことになります。
このパターンは、いくつかの原因から生まれます。
友人の飲酒のほうが目につきやすい。 友人が飲んでいるところはイベントで見ますが、飲まない夜の友人は見ません。イベントによって、目にするサンプルが友人の最も多く飲むパターンに偏ります。一方、自分の飲酒については、少なめの時期も含めてすべてのデータを持っています。
比較は人付き合いの場面で行われる。「友人より飲んでいない」というのは、たいてい飲みに出かけた夜のことです。飲酒の大部分、特に家での飲酒は、比較に含まれません。外では少ししか飲まないけれど家で大量に飲む人は、自分のほうが飲んでいないと感じながら、実際には友人よりも多くのアルコールを飲んでいることがありえます。
極端な例が認識の基準になる。 ときどきひどく飲む夜がある友人が、「大量飲酒」の基準になります。自分の行動は、平均するとどれだけ多くても、その最も極端な例には及ばないので、自分はほどほどだと感じるのです。
自分のイメージを守る比較。 自分の記憶と同じように、比較も「ほどほどに飲む人」という自己イメージを支えるように調整されます。自分を大量に飲む人だと考えると居心地が悪い人ほど、友人の飲酒を実際よりやや多めに思い出しがちです。
正直な試し方があります。あなたが自分の飲酒を記録し、いちばん親しい友人たちも記録して、そのデータを比べたら、あなたは実際に何番目になるでしょうか。これを実際にやってみた人のほとんどは驚きます。グループのいちばん上の人もいれば、いちばん下の人もいますが、予想どおりの順位になる人はほとんどいません。
# 対策
実際の数字に近づくための実践的な原則をいくつか紹介します。
# 思い出すのではなく、リアルタイムで記録する
リアルタイムで記録すれば、記憶の失敗のほとんどがなくなります。思い出す必要はなく、データがそのままの事実です。
# それぞれのドリンクが実際に何だったかを記録する
「ビール」だけでは足りません。「度数5.5%のIPA 1パイント」なら役に立つ情報になります。度数も量も大切です。その場でそれらを記録すれば、記憶の問題はなくなります。
# 家で注ぐ量を測ってみる
一度でいいので、「いつも」注ぐ量を計量カップに注いでみてください。ほとんどの人は驚きます。その後は、量を測って注ぐか、いつもの1杯を1杯ではなく1.5〜2標準ドリンクとして数えるようにしましょう。
# 「友人より飲んでいない」という直感を信じない
それはほぼ確実に、どちらかの方向に間違っています。データがあれば答えが出ますが、データのない比較では答えは出ません。
# 合計は毎週見る
1日ごとの数字は誤解を招きます。1週間の合計を見れば、実際のパターンがわかります。2晩に14杯を詰め込んだ週と、7日の夜に分けて14杯飲んだ週では記憶の中での感じ方が違いますが、アルコールの摂取量は同じです。
# データと言い争わない
データが予想以上の飲酒を示したとき、建設的な反応は「記録のしかたが間違っているに違いない」ではありません。記録という方法はたいてい正確で、思い出すという方法はたいてい不正確です。直感よりもデータのほうが正しい可能性が高いのです。
# 他人ではなく、過去の自分と比べる
役に立つ比較は、友人より多いか少ないかではなく、6か月前の自分より多いか少ないかです。記録があれば、その長期の比較が直接できます。
# 「ほどほどに飲む人」にとっての意味
特に注目しておきたい意味合いがあります。自分は「ガイドラインの範囲内で」飲んでいる、ほどほどに飲む人だと思っているなら、おそらくガイドラインが示す以上に飲んでいます。
英国のガイドラインは1週間に14ユニットです。米国では、NIAAAの低リスクの上限は、男性は1週間に14杯まで、女性は7杯までです。「ガイドラインくらい」飲んでいると言う人のほとんどは、正確に測ると、実際にはガイドラインの1.5〜2倍の量を飲んでいます。
これは必ずしも問題ではありません。ガイドラインは控えめな推奨値であり、ガイドラインを少し上回る程度の飲酒による健康リスクは小さなものです。しかし、「ガイドラインの範囲内」という認識と「ガイドラインの1.5倍」という現実の差は、示唆に富んでいます。それは、「ほどほどに飲む人」のほとんどが、実際には自分の摂取量をガイドラインと照らし合わせて確かめたことがなく、そう思い込んでいるだけだということを意味しています。
記録すれば、これがはっきりします。自分が実際に何を飲んでいるのかがわかります。わかったことをもとに調整するかどうかは、あなたが決めることです。
# AlcoLogが過小評価の問題にどう対処しているか
AlcoLogのデザインは、特に過小評価のパターンを狙ったものです。
カタログには92種類のサイズプリセットで1174種類のドリンクが収録されているので、あいまいなカテゴリーではなく、具体的なドリンク(ハイネケン1パイント、家で多めに注いだ赤ワイン)を記録できます。これにより、ワインの注ぐ量やビールの度数の問題に自動で対処できます。
家で注ぐ量の問題には、サイズプリセットのしくみで対処しています。家で注いだ量を、パブの標準的な量に丸めるのではなく、実際の量(250 mlのグラス、家で注いだスピリッツ50 ml)として記録できます。
セッションで記録するモデルでは、「忘れていたドリンク」のパターンも含めて、飲酒のセッション全体を記録できます。セッションの終わりにまとめてではなく、飲むたびに記録すれば、忘れられたドリンクの問題はなくなります。
履歴画面の月ごとのカードと推移のグラフでは、自分の認識と比べて、実際のデータがどうなっているかがわかります。数週間たてば、「どれくらい飲んだか」という自分の印象をデータと比べ、その差を直接確かめられます。
データは端末内に保存されます。アカウントも、クラウド同期も、評価や判断もありません。正直な記録は、データがプライベートなときに最もよく機能します。AlcoLogのプライバシーの考え方は、それを支えています。
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