飲酒を記録するというと、堅苦しく大げさに聞こえるかもしれません。でも、「ほどほどに」飲んでいると言う人の多くが、実際にどれくらい飲んでいるのかを知らないことに気づけば、印象は変わるはずです。自分が思っている飲酒量と実際の飲酒量の差は、アルコール研究の中でも比較的確かな発見のひとつで、自己申告と客観的な記録を比べたほぼすべての研究に現れます。記録が効果を発揮する理由は、監視でも自己規律でもありません。見えないものについては判断できない、ということです。このガイドでは、記録が実際に何をしてくれるのか、長続きする方法、何を測るか、そして必要以上に重く受け止めずに自分の数字を読み解く方法を解説します。
この記事は「飲酒の記録」セクションの中心となる記事です。個別のテーマ(行動科学、過小評価のパターン、記録方法の比較)は、それぞれの記事で掘り下げています。
# お酒の記録が効果を発揮する理由
記録が効果を発揮するのには、実際にやってみるまで気づきにくい、いくつかの具体的な理由があります。
# 見えるようになると正確になる
先週末に何を飲んだかは、ほとんどの人がおおよそ覚えています。しかし、その記憶には予測できるゆがみがあります。最初の1杯と最後の1杯は覚えていても、真ん中はぼやけます。パブでの夜のことは覚えていても、平日に家で飲んだワインは少なく見積もります。何杯だったかをはっきりさせずに「何杯か」と数えてしまいます。
飲んだその瞬間にすべてのドリンクを記録すれば、記憶の問題はなくなります。もう見積もるのではなく、実際に起きたことを読むだけになるのです。
# 時間がたつとパターンが見えてくる
1週間記録すれば、その週に何を飲んだかがわかります。1か月記録すると、パターンが見え始めます。どの曜日に飲むのか、どれくらい飲むのか、どれくらいの頻度で飲むのか、何がきっかけで飲む量が増えるのか。こうしたパターンは、人があまりうまく認識できない時間の幅で起こるため、記録していない人にはたいてい見えません。
「週に3晩飲む」というパターンは、「ときどき飲む」ように感じられます。それが月に12回のセッションとして表示されて初めて、自分がおよそ40%の日に飲んでいたことに気づくのです。
# 記録することで飲むペースが落ちる
ドリンクを記録しなければならないことには、ちょっとした認知的な効果があります。次の1杯の前に、短い間が生まれるのです。記録している人は、記録することで注いだり注文したりする無意識の流れが中断されるというだけの理由で、少しゆっくり、少し少なめに飲むことがよくあります。
これは操作ではありません。無意識に飲むと、意図して飲むときよりも量が増えがちだということです。記録は、意図を持つ瞬間を加えてくれます。
# データが判断の材料になる
実際の飲酒量が見えるようになれば、そのパターンが自分の望むものと合っているかどうかを判断できます。データを見て、今のままでいいと決める人もいれば、変えようと決める人もいます。どちらの反応も情報に基づいたものです。データがなければ、どんな反応も推測でしかありません。
この判断を支える働きこそが、お酒を減らしたい場合も、今のままでいたい場合も、より考えて飲みたい場合も、記録が役に立つ理由です。印象ではなく、本当の情報に基づいて考えられるのです。
# 実際に何を測るか
最も役に立つ情報が得られる記録の項目は次のとおりです。
# ドリンクの杯数
基本となる数です。ただし、パイント、ワイングラス、ショットは同じではないので、「1杯」の定義が必要です。いちばんすっきりした方法は、杯数を数え、さらにそれが何だったか(ラガー1パイント、ワイン175 mlのグラス1杯、ジンのダブル)を記録することです。その組み合わせがあれば、後で計算できます。
# ユニット(または標準ドリンク)
ユニットは、純アルコールの量を標準化した単位です。英国のユニットは ml × 度数 ÷ 1000 で計算します。米国の標準ドリンクは純アルコール14 gで、英国のユニットより約44%大きい量です。地域による違いは、「アルコールのユニット」セクションで取り上げています。
杯数だけでなくユニットを記録する利点はここにあります。度数7%のIPA 1パイントには、度数3.5%のビター1パイントのおよそ2倍のアルコールが含まれています。どちらも「1杯」と数えるのは誤解を招きます。ユニットを使えば、違うドリンクを飲んだセッション同士を比べられます。
# 時間
いつ飲み始めたか、それぞれのドリンクをいつ記録したか、いつ飲み終えたか。パターンは量と同じくらい重要です。4時間で6杯飲むのと、90分で6杯飲むのとでは、影響が違います。
# カロリー
体重を気にしている人や、お酒のカロリーと食事のバランスをとりたい人に役立ちます。これについては「アルコールのカロリー」セクションで取り上げています。
# 費用
飲んだ量以上に、少なく見積もられることが多い項目です。月々のお酒の出費を表にして見ると、自分の出費をわかっているつもりの人でも驚くことがよくあります。
# あわせて水分補給
飲酒中に記録した水は、二日酔いのひどさや翌日の調子を予測する最も強力な手がかりのひとつです。記録すれば、「お酒と一緒に水も飲んでいる」というつもりが、実際の行動と合っているかどうかがわかります。
# 飲んだ日と飲まなかった日
時間を通した頻度のパターンです。多くの人は、自分が思っているよりも月に多くの日に飲んでいます。ヒートマップで見ると、そのパターンがはっきりわかります。
# 効果のある記録方法
記録方法を正直に比べると、次のようになります。
# 頭の中で記録する(「頭の中で数えているから大丈夫」)
うまくいきません。自分の記憶と客観的な測定を比べた研究ではどれも、記憶に自信のある人でさえ、かなり少なく見積もっていることが示されています。脳は、4時間のセッションで飲んだ杯数を数えるのが苦手です。これは道徳的な失敗ではなく、誰にでもあるワーキングメモリーの限界です。
今の記録方法が「自分がどれくらい飲んでいるかはわかっている」なら、その方法はおそらく30〜50%少なく見積もっています。
# 紙とペン
実際に続けられるなら効果があります。紙を取り出してドリンクを書き込む手間が障壁になり、多くの人は飲む量が多いセッションで記録を飛ばしてしまいます。まさにそのときこそ、データが最も役に立つのですが。
利点は、アプリもバッテリーも不要で、クラウドへの保存によるプライバシーの心配もないことです。個人的な記録にアプリを使いたくない人に向いています。
# スプレッドシート
分析には紙よりも向いています(何か月分もの合計を自動で出せます)。一方、セッション中の記録には紙よりも向いていません(後で忘れずに更新する必要があり、記録しないのと同じ記憶の問題が生じます)。
すでに日常的にスプレッドシートを使っていて、分析的な見方が好きな人に向いています。
# スマートフォンのメモアプリ
スプレッドシートより手間は少なく、専用の記録アプリよりは手間がかかります。1杯飲むたびに1行追加する習慣を続けられるなら効果があります。
限界は、後で分析する(合計、ユニット、週ごとのパターン)には自分で計算する必要があることで、ほとんどの人はそこまでしません。
# 専用の飲酒記録アプリ
セッション中の手間が最も少なく(ワンタップで記録)、分析は自動(ユニット、カロリー、週ごとのパターン)で、過去のデータも保存されます。
引き換えになるのはプライバシーで、アプリによって異なります。アカウントが必要なアプリ、サーバーと同期するアプリ、広告主とデータを共有するアプリもあります。一方で、AlcoLogのように、アカウント不要ですべてを端末内に保存するアプリもあります。
# 飲酒の記録ができるヘルスケアアプリ
Apple Health、Google Fitなどのアプリでも飲酒を記録できますが、それが主な目的ではありません。全般的な健康の記録には向いていますが、お酒に特有のパターンを見るのには向いていません。
一部の専用の飲酒記録アプリ(AlcoLogを含む)は、Apple Healthに一方向で書き込めるので、記録は専用アプリで行い、データはメインの健康ダッシュボードに表示される、ということができます。たいていはこれが両方のいいとこ取りです。
# 気まずくならずに記録を始めるには
記録が自分を取り締まる作業にならないよう、始めるときに役立つ実践的なパターンをいくつか紹介します。
# まず記録し、判断は後で
記録を始めると、すぐに飲む量を減らそうと決めたくなります。その気持ちはこらえましょう。まず2〜3週間、今飲んでいる量を正確に記録してください。正直な基準値を手に入れるのです。
変えるかどうかの判断は、データを手に入れてからです。記録と飲酒の変化を同時にやろうとすると、たいてい記録には、実際にしたことではなく、こうしたかったということが表れてしまいます。
# 「1杯だけ」も含めて、すべて記録する
人が数えないドリンクこそ、たいてい最も数えるべきものです。料理をしながら飲むワイン、サッカーの試合を見ながら飲むビール、夕食の食後酒。アルコールが入っていれば、数に入ります。記録のそもそもの目的は、実際に起きていることを見ることです。
# 記憶から後で埋めない
ドリンクを記録し忘れたら、今記録するか、飛ばしましょう。3日前に何を飲んだか思い出そうとするのは、記録によって避けようとしている記憶の問題そのものです。つくり上げたデータよりも、少しデータが欠けているほうがましです。
# いちばん楽な方法を選ぶ
実際に使い続けられる方法こそが、正しい方法です。複雑な記録の仕組みを試す人は、たいてい2〜3週間でやめてしまいます。ワンタップで記録できるアプリを使う人は、何年も記録を続けることがよくあります。
# 共有したくなければデータは共有しない
記録はあなたのためのものです。あなたの飲酒データはあなたのものです。ほとんどのアプリはデータを共有しませんが、インストールする前に確認しましょう。AlcoLogのApple Healthとの連携は一方向(書き込みのみ)で、ほかのアプリがヘルスケアのデータを読み取れるかどうかは、あなたが管理します。
# すでにある習慣に組み込む
ドリンクの記録は、飲む場面ですでにしていることと一緒にすると、いちばんなじみます。飲み物を待つ間にメッセージを確認しようとスマートフォンを取り出したら、それが前の1杯を記録するタイミングです。家でグラスを置いたら、それが記録のタイミングです。
記録を別の儀式として加えようとする人は、たいてい続きません。すでにあるスマートフォンを見るタイミングに組み込む人は、たいてい続けられます。
# データから実際にわかること
数週間正確に記録すると、役に立つパターンが見えてきます。
# どれくらい飲んでいるか
中心となる数字です。1週間あたりの杯数、1週間あたりのユニット、1週間あたりの禁酒日数。初めて自分の数字を見ると、ほとんどの人が、どちらかの方向に驚きます。思っていたより少ない人もいますが、思っていたより多い人のほうが多いのです。
# いつ飲んでいるか
曜日ごとのパターンです。週末だけ飲む人もいれば、火曜から土曜まで飲む人もいます。毎晩同じ時間に飲む人もいれば、週末に集中して飲む人もいます。
このパターンは、誰かに教えてもらわなくても、ヒートマップを見るだけでたいていわかります。
# 何がきっかけで飲む量が増えるのか
セッションの記録がたまると、どんなときに飲む量が増えるのかというパターンが見えてきます。仕事でストレスの多い週、特定の友人、特定の店、ある種の気分、旅行。「何があると飲む量が増えるのか」という、抽象的には答えにくい問いが、データの中ではっきりしてきます。
# どれくらいの速さで飲んでいるか
1時間あたりの杯数、最も速いペース、ドリンクとドリンクの間隔。多くの場合、ペースは合計の量以上に、二日酔いのひどさや翌日への影響と関係しています。
# いくらかかっているか
使った金額の合計です。ほとんどの人は、実際より30〜50%少なく見積もっています。記録すれば、本当の数字がわかります。
# どう変わっているか
何か月にもわたる推移です。お酒を減らしている人は、その減少が本物で続いているかどうかを確かめられます。変えていない人は、何も変わっていないことがわかります。
推移は、記録によって答えが得られる問いの中でも特に重要なものです。飲酒の変化のほとんどは少しずつ起こり、長期のデータがなければ気づきにくいからです。
# 記録では解決できないこと
正直に挙げておくべき限界がいくつかあります。
# 記録だけで飲む量が減るわけではない
「記録すると飲む量が減る」という言い方は、部分的には正しいものです。記録によって自分のしていることがわかり、飲む量を減らす人もいます。データを見ても変わらない人もいます。記録は情報を与えてくれますが、その情報で何をするかは別の問題です。
お酒を減らすことが目標なら、記録は役に立つ手がかりのひとつですが、治療ではありません。
# 記録では、お酒を飲む理由には対処できない
人がお酒を飲むのには、習慣以外の理由があります。不安、うつ、周囲からのプレッシャー、退屈、ADHDの自己治療。記録していてもいなくても、こうした理由は働き続けます。根本にある理由に対処しないまま飲む量を減らしても、長続きしません。
根本にある状態については、「アルコールとメンタルヘルス」セクションで取り上げています。
# 記録そのものが問題になることもある
自分の行動を強迫的に監視しがちな人(摂食障害、健康の数値への不安、完璧主義)にとって、記録はそのとらわれをよくない方向に強めてしまうことがあります。記録から情報ではなく苦痛が生まれているなら、それはあなたに合った手段ではありません。
# 記録は医療の支援の代わりにはならない
アルコール使用障害、依存、飲酒によるはっきりした害がある人にとって、記録は治療ではありません。医療の支援、場合によっては薬物療法(選択肢は「ナルトレキソン」セクションで取り上げています)、場合によっては心理療法のほうが適した手段です。
記録は、パターンや進歩を浮かび上がらせることで、こうした治療を補うことはできますが、その代わりにはなりません。
# AlcoLogの記録のしくみ
AlcoLogでは、カスタマイズできるお気に入りリストからワンタップで、新しいドリンクなら「ドリンクを追加」画面から2タップで、すべてのドリンクを記録できます。カタログには92種類のサイズプリセットにわたる1174種類のドリンクが収録されているので、よく飲まれるドリンクのほとんどには、正確な度数とカロリーのデータがあらかじめ入っています。
セッションで記録するモデルでは、日ごとにばらばらに記録するのではなく、はっきりした始まりと終わりのある「セッション」の中でドリンクを記録することを前提にしています。これは、カレンダーの1日単位のモデルよりも、ほとんどの人の実際の飲み方(始まりと終わりがはっきりした、ひとまとまりのセッション)に合っています。
データは端末内に保存されます。アカウントもメールアドレスも不要で、サーバーとのクラウド同期もありません。データのバックアップや共有にはCSVの書き出し(無料版は直近10セッション、Premiumは無制限)を使います。AlcoLogは各ドリンクをApple Healthに書き込めるので(一方向で、AlcoLogがヘルスケアのデータを読み取ることはありません)、必要であれば、メインの健康ダッシュボードにデータを表示できます。
履歴画面では、データをさまざまな形で見られます。合計を示す月ごとのカード、カレンダーのヒートマップ、推移のグラフ(杯数、ユニット、カロリー、費用)、セッション一覧。どんな形でデータを見たくても、それに合った表示があります。
AlcoScoreの「回復」の柱は、特にセッションとセッションの間の休息日を評価します。カレンダーのヒートマップを見れば、休息日のパターンがひと目でわかります。
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